【2014年版】数値で見る!太陽光発電業界の最新動向と今後の展望
太陽光発電に関するPVN24独自のニュースを特集記事として配信!
固定価格買取制度のスタートから早3年目を迎えた今年は、買取価格の変更だけでなく制度運用面の大幅な見直しも行われた。
特に、J-PECの補助金が終了したこと、50kWずつに設備分けて連系する分割案件が禁止されたことについては今後の動向を左右するには十分な事項であるため、留意しなければならない。
本記事では、大きな変化が巻き起こると予測される2014年の太陽光発電事業とその今後の展望について、実際のデータと具体的な数値を用いて考察していく。
固定価格買取制度導入後の太陽光発電システム導入量の動向
経済産業省は今年6月、平成24年7月から平成26年3月末時点における再生可能エネルギー発電設備の導入状況を発表した。
当該期間中に認定された太陽光発電設備は、10kW未満の設備(住宅用)が61万5,798件/268万7,638kW、10kW以上の設備(産業用)が58万3,224件/6,303万7,677kW(うち、メガソーラーが8,780件/3,750万9,142kW)という結果になった。
そのうち、稼働済みの設備は10kW未満の設備で49万9,123件/227万6,405kW、10kW以上の設備で12万0,469件/643万9,482kW(うち、メガソーラーが1,110件/212万6,114kW)となっており、10kW未満の設備は84.7%が稼働済み(容量ベース)となっているのに対して10kW以上の設備は10.2%しか稼働していないという実態が浮き彫りとなった。
区分 | 認定件数認定容量 | 稼働済み件数稼働済み容量(認定件数との割合) | 買取制度導入前の累積導入量(参考) |
---|---|---|---|
10kW未満の設備(住宅用) | 61万5,798件 268万7,638kW |
49万9,123件 227万6,405kW(84.7%) |
約470万kW |
10kW以上の設備(産業用) | 58万3,224件 6,303万7,677kW |
12万0,469件 643万9,482kW(10.2%) |
約90万kW |
太陽光発電に係るコストの推移
太陽光発電システムのコスト(太陽光パネル、パワコン、架台、工事費を含む価格)は、固定価格買取制度の導入や補助金制度の影響もあり、年々徐々に低下してきている。
10kW未満(住宅用)の太陽光発電システムに係るコスト
固定価格買取制度の調達価格・期間を決定する際の根拠とされる調達価格等算定委員会の「平成26年度調達価格及び調達期間に関する意見」によると、10kW未満の設備の前提は38.5万円/kW(平成25年10-12月期の新築設置平均)となっている。前年度の前提が10kW未満の設備で42.7万円kWだったことを考えると、大幅に設置コストは低下していると言えるだろう。
運転維持費については、パネルメーカーやJPEAへのヒアリング、実際のユーザーへのアンケートを行った結果、年間3,600円/kWとなった。
10kW以上(産業用)の太陽光発電システムに係るコスト
同資料によると、10kW以上の設備の前提は27.5万円/kWとなっており、平成25年度の28万円/kWからあまり変化は見られない。
土地造成費用は中央値と平均値に大きな差があったが、敷地全体をコンクリートで整地するケースやゴルフ場跡地など複雑な地形へ設置する案件が平均値を高めていることが確認され、中央値である4,000円/kWが採用された。
運転維持費についてはは前年度から1,000円ダウンとなる年間8,000円/kW、接続費用と土地賃借料については前年度から据え置きとなり、それぞれ1.35万円/kW、年間150円/㎡となった。
太陽光発電システムのコスト内訳
公益財団法人自然エネルギー財団による資料「太陽光発電事業の現況とコスト」によると、太陽光発電システムのコスト内訳は全体平均でモジュールが40%強、工事費が20%、パワコンと架台がそれぞれ10%強、土地造成費用や系統接続費用といったその他の費用が15%となった。
同資料から、システムの規模が大きくなるほどモジュールコストとパワコンコストは低下する傾向にあるが、架台や工事費についてはどのような規模であっても10%以上の割合になることがわかった。なお、2MW以上のシステムは連系区分が特別高圧であるため、高圧連系となる2MW未満の設備よりも大幅に接続費用が高くなると予測される。
新しい設備認定の運用について
場所及び設備の確保に関する機嫌の設定について
前述したように、固定価格買取制度の開始から平成26年3月末の時点で運転を開始した設備は全体の10%程度しかない。平成26年4月1日以降に設備認定申請が到達した案件に対しては、認定後180日以内に設置場所の登記簿謄本(賃借の場合は契約書等も)と設備の発注書・発注請書または契約書の提出が義務付けられた。
場所及び設備の確保が確認できない案件については、認定を失効するように運用するとしている。ただし、電力会社との連携協議が長引いている場合や東日本大震災の地域である場合は、特別に提出期限の延長が認められる。
地権者の証明書の取り扱いについて
認定後に場所の確保を巡ってのトラブルが多く発生していることを受け、認定申請時点で、設置場所に係る土地等を所有せず、又は賃借せず、もしくは地上権の設定を受けていない場合には、当該土地等の登記簿謄本の写しと、当該土地等を譲渡もしくは賃貸もしくは地上権を設定する用意がある旨の権利者の意思を示す書面(権利者の証明書)の提出が義務付けられた。設置場所に係る土地等が共有に係る場合には、共有者全員の名簿および認定申請社を除く当該共有者全員の権利者の証明書の提出が必要となる。
なお、認定の審査に際して、同一の土地で両立しないと認められる複数の権利者の証明書の発行が確認された場合は、申請者が当該証明書の発行者から最終的な意思に基づく同意を一に決定したことを証する文書を入手し、提出されるまでは認定の審査を留保するとしている。
分割案件の取り扱いについて
平成25年度までは、50kWを超えるシステムを50kW未満で分割して低圧連系したものが一つの設備として認められていたが、これは本来適用される安全規制の回避等による社会的不公平、電力会社の設備維持管理コストの増加による事業者間の不公平や電気料金への転嫁の発生、社会的な非効率性の発生等の問題が発生する他、今回新たに運用が開始される条件付き認定を回避することにも繋がるため、事実上禁止された。
ただし、実質的に同一の申請者から同時期又は近接した時期に複数の同一種類の発電設備の申請があった場合や、当該複数の申請に係る土地が相互に近接するなど、実質的に一つの場所と認められる案件については、分割案件として取り扱われる場合もあるようだ。
これらの動向が及ぼす業界への影響と今後の展望
買取価格の低下に伴う影響はあまり大きくない
平成26年度の10kW未満のシステムによる買取価格は、前年度から1円ダウンの1kWあたり37円(税込)、10kW以上のシステムによる買取価格は、前年度から4円ダウンの1kWあたり32円(税別)となった。
住宅用太陽光発電は、J-PECの補助金制度が終了したことや補助金制度を行う自治体が減少していることから導入ペースは多少落ちるとされているが、システム単価が順調に低下してきていることや買取価格が前年度からほぼ据え置きであるため、今後も導入量は堅調に推移すると予測される。来年度の買取価格がいくらになるのかはまだ不明だが、30円前後まで下がると仮定すると、今年度が導入するラストチャンスになると言えるだろう。
産業用太陽光発電(ミドルソーラー・メガソーラー)については、システム単価や工事・造成費用、その他の付帯費用があまり低下していない状況で買取価格が大幅にダウンしたため、採算性への影響が気になるところだ。
調達価格等算定委員会の意見では、産業用太陽光発電システムのシステム単価は27.5万円/kWとされているが、これは比較的規模の大きいシステムでかつ効率的にプロセスを経た場合の価格と想定されているため、中小規模のシステムだとシステム単価はより高くなる。実際に、経済産業省が昨年9月に行った報告徴収によると、500kW以上1MW未満システムの平均単価は30.5万円(平成25年度)という結果になっている。
これらのことから、1メガワット以上の規模の大きなシステムであれば前年度よりも回収にかかる期間が1年ほど延び、20年間の合計売電収入が8~12%程度低下する程度の影響になるが、中小規模のシステム、とりわけ従来まで分割案件としていた規模のシステムについては、規模が小さくなるほどより回収期間は長く、売電収入は低下すると考えられるだろう。
低コスト架台の開発と工事費用の削減が単価低減のカギ
固定価格買取制度の開始以来、太陽光パネルとパワーコンディショナの価格は大幅に低下した。この二点については今後の大幅な低価格化は望めないだろう。
2014年以降は、低コスト架台の開発と設置工事の効率化・工数削減を図ることが、更なるコスト低減を実現するキーポイントとなるのではないだろうか。太陽光発電に係るコスト全体のうち、架台費用は10%強、工事費用は20%弱を占めており、これはシステム規模によらず一定であることから削減の余地があると考えられる。
中には、既にこうしたコストの削減に取り組んでいる架台メーカーやディベロッパー・EPC事業者も見受けられており、コスト削減や施工性の向上を実現しているという。
太陽光発電事業を実施するリスクは増している
2014年以降に太陽光発電事業を行うにあたって考えられる最大のリスクは、電力系統へ接続(系統連系)できるかということだろう。電力系統への接続量が限界に達する可能性のある地域では、接続量の制限や接続申みの回答保留といった対応が取られており、事業の実施を大きく妨げる原因となっている。
- 沖縄電力 – 沖縄本島系統における再生可能エネルギー接続について
- 九州電力 – 離島の再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答保留について
- 経済産業省 – 北海道における大規模太陽光発電の接続についての対応を公表します
系統連系に次ぐリスクとして、設置場所の確保が挙げられる。全国的に良好な条件の土地が減少していることに加えて、土地が見つかった場合にも賃借料の折り合いが付かない、土地利用規則が厳しく不調であるといった理由で事業を断念したケースも多いという。
入念な調査と綿密なスケジューリングこそが、事業を実施する確実性を向上させるためにもより重要になると言えるだろう。