「リチウムイオン蓄電池」市場拡大の大本命
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再生エネルギー特別措置法による固定価格買取制度や全国的な電力不足を背景に蓄電池事業に注力する企業が増えている。経済産業省の試算によると、蓄電池の世界的市場規模は2011年の5兆1000億円から2020年には20兆円に拡大するといわれる中、日本政府の目標シェアは2020年時点で50%としており、メーカー各社がリチウムイオン蓄電池の開発を急いでいる。
本章では、国内家電メーカーの不振が続く一方、蓄電池分野では世界をリードする技術力を背景に、日本経済脱却のカギとして期待される「リチウムイオン蓄電池」の現状と製品概要を紹介していきたい。
蓄電池普及の背景
蓄電池が注目される背景としては、補助金給付による公的支援が第一に挙げられる。「定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費」という名で非常時のバックアップ電源、夜間電力のピークカットとしての利用目的で導入費の3分の1が支給されることになっており、今後発売される蓄電池は補助金対象機器として順次登録されていく予定だ。
また、環境省による「グリーンニューディール基金」も普及要因の一つである。東日本大震災により被害を受けた東北地域を中心に公的施設を対象として設置費用の全額を補助するもので、太陽光発電も該当設備として認定されており、予算規模も比較的大きい。震災をきっかけとして防災上の観点から太陽光発電や蓄電池が注目される存在となり普及を後押ししているのが現状である。
蓄電池の特長・メリット
蓄電池を活用する上で最大のメリットは、夜間割安の電気を貯めておき、電気料金の高い昼間の時間帯に貯めた電気を優先的に利用するピークカットを行える点である。電気を貯めたい時間帯を予めタイマーセットしておくことで、夜間や電気使用がピークになる時間帯に自動で動き出す。これにより、昼間と夜間の電気料金の差額分節約になることに加えて、電気料金メニューの基本料金の段階を引き下げる効果も期待できる。
さらに、蓄電池事業の延長線上には様々な応用分野が控えている。スマートグリッドやスマートハウスといった省エネ型次世代住宅がそれにあたり、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を中核としてエネルギー機器、家電製品をネットワーク化、電気の供給量に応じて機器をコントロールし、電力会社から購入する電気を最小限に抑えるなど応用分野は幅広い。
実際に、パナソニックは太陽電池と蓄電池を連携して家庭内の電気をまかなう「創蓄連携システム」(住宅用発電・蓄電システム)をリリース、拡販に取り組んでいる。蓄電池を太陽光と連携させ、太陽光を蓄電することはもちろん、停電時には自動的に電源を太陽光に切り替えるなど電力制御機能が働き、電気を有効活用する仕組みが設けられている。今後メーカー各社はこうしたスマートハウスとしての利用を前提とした研究開発に一段と注力するものと考えられる。
一般的にはまだまだ手の届かない価格
パナソニックの蓄電池はリチウムイオン電池を使った4.65kwhで189万円。フル充電なら冷蔵庫やテレビなど家電を2日間程度使用できる。日立製作所は7.8kwhのシステムを210万円で、NECは5.53kw型を150万円で発売した。
リチウムイオン電池の寿命は大まかに5~10年と言われており、仮に10年使用できたとして年間20万円のコストがかかる。家庭用電気の昼間と夜間の差額を20円、夜から昼にシフトした電気を年間2000kwhと仮定した場合を計算してみても年間コストを回収しきれないのは明白である。
このように、メーカー各社が心血を注いで研究開発に取り組んでいる蓄電池だが、1台200万円程度という高価格が普及の足枷となっている。しかしながら、富士経済の予測では2020年には蓄電池は国内で7万500台まで拡大する見通しとなっており、一般に浸透するにはさらなる低価格化が求められている。
成長分野として日本の技術力を結集
経営再建を進めるNECは以前より日産自動車と合弁でリチウムイオン電池生産を手掛けており、これまで車載用での実績を積み上げてきた。NECに限らず日本メーカーのリチウムイオン電池にかかわる技術は総じて高く評価されており、住宅用にもその裾野が広がった時、業界として大きな収益が見込めるとの見方がある。
すでに車載用のリチウムイオン電池をそのまま住宅向け蓄電の用途として利用する仕組みも公開されており、自動車制御装置に見られる精緻な日本の技術力は世界を牽引していくに足るものと大いに期待されるところである。
しかしながら、昨今の国内メーカーが苦境を強いられている液晶、半導体分野に見られるように、大規模資本による製造競争に陥ると、途端に韓国や中国など海外勢に主導権を奪われることになりかねない。日本の成長分野として位置づけを共通認識として持ち、原材料調達や円高対策も含めた発展シナリオを業界の壁を越えて描いていかなければならない。