土地活用の幅を広げる「ソーラーシェアリング」

太陽光発電に関するPVN24独自のニュースを特集記事として配信!

ソーラーシェアリングとは?

ソーラーシェアリング構図

ソーラーシェアリングとは、農地の上に藤棚のように太陽光パネルを設置し、農作物の成長に必要な日照を確保しつつ、太陽光を発電と農業でシェアする(発電と農業を同時に行う)仕組みのこと。

CHO技術研究所の長島彬さんが提唱しました。

ソーラーシェアリングに関する制度

今までの制度下では、農地の利用方法には多くの制限があり、農業以外の用途で農地を使う場合には農地転用手続きを行う必要がありましたが、太陽光発電システムの設置については今まではっきりとした取り決めがありませんでした。

そこで農林水産省は3月31日、農地への太陽光発電システム設置を認める決定を行い、その際の許可条件などについて定めた資料を公表しました。これによって、太陽光発電と農業を同時に行うことが事実上可能となりました。

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支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて

許可条件などについて

事実上農地での太陽光発電が承認されたといっても、実施するにあたってはいくつかの条件をクリアする必要があります。太陽光パネルを取り付ける支柱については一時転用の許可をとる必要があり、一時転用許可の条件は以下のように定められています。

  • 1.発電システムを設置した農地における営農に支障をきたさないことを前提とし、
     支柱は発電システムを支えるためのものとして利用されること。
  • 2.発電システムを設置した農地において生産された農作物に関する状況を年に1回報告すること。
  • 3.営農の継続が怪しくなった場合には、迅速に改善措置をとること。
  • 4.また改善措置を取る場合や、発電事業を廃止する場合には素早く報告すること。
  • 5.営農が行われていない場合や発電事業を廃止する場合には、支柱を含む発電システムを速やかに撤去し、
     農地として利用することが出来る状態に回復すること。

転用期間は3年となっており、期間が満了する場合には改めて一時転用許可を申請することが出来るため、事業として取り組むことも可能になったと言えるでしょう。ただし、次の場合については、営農の適切な継続が確保されていないと判断され、再度の一時転用許可はおりません。

  • 1. 営農が行われない場合
  • 2. 農地における単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少している場合。
  • 3. 農地において生産された農作物の品質に、著しい劣化が生じていると認められる場合
  • 4. 農作業に必要な機械等を効率的に利用することが困難であると認められる場合

ソーラーシェアリングのメリットとデメリット

ソーラーシェアリングの実証実験を行うCHO研究所によると、ソーラーシェアリングには経済的なメリット以外にも様々なメリットを得ることが出来るようです。大型農機での作業しにくくなるデメリットと正しく比較しましょう。以下、CHO研究所が発表した資料より抜粋。
(長島彬『ソーラーシェアリングを導入される方のためのご案内』,2013)

5mおきに設置された支柱があること
・支柱を基準にした農機の高精度の自動運転が出来る可能性が高い。
・支柱を利用して防虫網や害獣防護柵の設置が容易になること。
・支柱があるんで、監視カメラを取り付け作物の状況が自宅から常時監視可能になること。

太陽光パネルによって遮光される効果
・湿度が維持でき微生物の活動を助け、良い土を作りやすい環境になる。
・作物の旬の期間を長くすることができる。
・酷暑による米の白化を防止できる。
・完熟になる速さを遅くし、完熟品出荷がしやすくなる。
・日照りに強い有害な雑草を減らして除草が容易になり、鋤コミも効果的になる。
・夏の農作業が楽になる。
・農作業による日焼けや老化防止に効果がある。
・水の蒸散が減少し灌漑用水が節約できる。
・トラクターキャビン内の温度が下がりエアコン使用を減らせる。

ソーラーシェアリングの今後の展望

数年前から、農業従事者の不足や高齢化が深刻化しており、大きな問題とされています。TPPに参加するとなると、ますます農業を取り巻く環境は厳しいものとなるでしょう。
日本の農家が培ってきた農業の技術や品質は世界に誇れるものであり、輸入品の氾濫によってそれらを廃れさせるということは一番避けたいシナリオです。

変化の激しい時代のなか、日本の農業、農家を廃れさせないためにも、農業収入とは別の安定した収入源を確立することは農家を守る上で非常に重要と言えます。そういった背景から、今後徐々に「ソーラーシェアリング」は普及していくのではないかと予測されます。