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2012年10月6日
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メガソーラー建設へ始動

 岩沼市が東日本大震災で被災した沿岸部の農地に大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を計画している。一時は建設の前提となる農地転用が壁になっていたが、復興への貢献方法などを示して農林水産省の理解を得た。市は今月下旬に予定している国や県との協議に計画を示す方針で、国の同意を得て建設へ向けて本格的に動き出す。
 「メガソーラーで土地を活用する計画を早く進めてほしい」。7月下旬に行われた、メガソーラー建設予定地の地権者に対する岩沼市の説明会。ある男性がそう訴えると、他の被災農家から拍手が起きた。
 市は5月、被災した沿岸部の54ヘクタールでメガソーラーの導入を計画。このうち36ヘクタールが農地だ。6月下旬には、日立製作所や丸紅などの企業体が参入することが決まった。出力は国内有数の出力3万2千キロワット、作った電気はすべて東北電力に売る方針だ。2014年度の稼働を目指す。
 津波をかぶった農地では、農作物が枯れたり腐ったりする塩害が起きる。だが、「除塩」は手間と時間がかかる。そのうえ建設予定地は1メートル近く地盤沈下し、排水が難しい。
 だが、メガソーラー用地として企業体に貸し出せば、農家ら地権者には、最低でも10アール当たり年4万円の借地料が入る。市は「復興の目玉の一つ」と期待したが、その土地を農地以外に使う「農地転用」の手続きをめぐって難航した。
 メガソーラーを造るには、農地転用を農水省に認めてもらう必要がある。同省の出先の東北農政局は当初、市の計画に難色を示した。2月以降の市との事前調整の中で、転用を認める条件として(1)全地権者の同意(2)雇用の創出(3)復興への具体的な貢献策――を挙げた。
 「雇用の創出や復興への貢献を具体的に示すのは高いハードルだ」。市の担当者は頭を抱えた。メガソーラーの日常的な維持・管理は数人程度で済む。雇用が見込めるのは、土地の造成やソーラーパネル設置の時ぐらいだ。
 それでも市は、9月中旬から農政局と本格協議を始めた。土地造成で見込める雇用が、被災者の生活再建支援につながることや、メガソーラーで作った電気を、災害時に避難所で使うための仕組み作りに取り掛かったことなどを訴えた。
 最近になって「被災地で農地転用が復興の壁になっている」との指摘が相次いだ。これを受けて、平野達男・復興相は2日の記者会見で、農地転用を認める条件を「(転用後の活用法など)ある程度計画がしっかりしていること、地権者との話し合いがどこまで進んでいるかが重要だ」とした。
 岩沼市にとって、ハードルが低くなった。事業を担う企業が決まり、多くの地権者の理解も得ているからだ。市の担当者は「計画の概要が固まり、国も協議に前向きになった」とみる。
 市は、今月下旬に予定している国や県との協議で同意を得たいとしている。市は今後、農政局とさらに協議を重ね、メガソーラーが復興にどう役立つのか、電力不足の不安解消にどうつながるのかなどを具体的に詰める方針だ。

(記事:朝日新聞)

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