
生存競争が始まった中国太陽電池業界
中国の太陽電池大手、尚徳電力(サンテックパワー)の創業者である施正栄氏が逆境に立たされている。かつては中国一の資産家だったが、同氏が築き上げた帝国は今や目を覆うばかりの状況だ。
■経営破綻の危機に直面する企業も
中国の太陽電池メーカーの業績が悪化している(浙江省永康市の太陽電池工場)=ロイター
サンテックは今年、太陽光パネルの生産を4割削減した。株価は年初来で6割下落、米ニューヨーク証券取引所(NYSE)からは上場廃止の警告も受けた。純負債は16億ドルと資本の2倍を超え、最近になって拠点を置く江蘇省無錫市に金融支援を要請。2013年3月には多額の借金返済期限が迫っている。
サンテックの苦境は世界最大の太陽光パネル生産国である中国で、業界を取り巻く経営環境が大きく変化していることを浮き彫りにしている。中国メーカーはここ数年で低価格の太陽電池を猛スピードで世界中に氾濫させた。だが、今や多額の負債を抱えて生産削減やレイオフ(一時解雇)に追い込まれ、一部は経営破綻の危機に直面している。
太陽電池業界の痛みを伴う再編は各国で進み、ドイツのQセルズや米国のソリンドラなどは破産を申請した。
■中国政府の支援策に注目
アナリストの間では、こうした世界中の太陽電池業界の先行きが中国の政策に大きく左右されるとの見方が有力だ。彼らは中国政府の政策のうち、太陽光パネルの国内需要喚起策と、自国の太陽電池メーカーの経営破綻回避に向けた支援策の2つに注目している。
中国は今年、太陽光パネルを4~5ギガワットと昨年比倍増させ、ドイツに次ぐ世界第2位の太陽光パネル市場になるとみられている。政府も今年、15年の太陽光発電の設置目標を21ギガワットに引き上げると発表した。これは10年の発電能力の25倍に相当する。
しかし、手厚い全量買い取り制度が昨年導入されたにもかかわらず、今年の太陽光発電需要はほとんど満たされていない。送電網の不備が足かせとなっているからだ。
バークレイズ・キャピタルの調査では、10月中旬までに設置済みの太陽光発電はわずか1~2ギガワットと年間予想の半分以下にとどまる。さらに、設置業者によるメーカー各社への支払いが遅延するケースが頻発し、国内の利益率は海外に比べ低水準にとどまっている。
(記事:日本経済新聞)