
近畿の太陽光発電、新設計画3倍に
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まって約3カ月。9月末時点の近畿地区の太陽光発電の新設計画は1万6951件で、7月末の約3倍に増えた。伸びが目立つのは企業や自治体が新設する小型の太陽光発電施設だ。オフィスや工場の屋根、遊休地を活用するケースが多く、今後も伸び続ける見通し。ただ、お天気任せの太陽光発電は出力が不安定で、関西の電力不足を補うには課題も残る。
資源エネルギー庁が10日まとめた9月末時点の再生エネの設備認定件数によると、近畿の件数ベースで最も多いのは住宅用(出力10キロワット未満)の太陽光発電施設。7月末比で3倍の1万5902件だった。
伸び率でみると、7月に始まった固定価格買い取り制度の対象となる産業用施設(出力10キロワット以上)が上回った。新設件数は同13倍の1049件。このうち出力1000キロワット以上のメガソーラー(大規模太陽光発電所)は20件にとどまり、10キロワット以上1000キロワット未満の小型施設が全体をけん引した。
合計出力(風力などを含む)は18万8368キロワットで、7月末の約4倍だった。内訳では産業用(8万607キロワット)が住宅用(6万5620キロワット)を上回った。
積水ハウスは住宅部材などを製造する兵庫工場(兵庫県加東市)に2013年3月末までに280キロワットの太陽光発電システムを設置する。起こした電気は全量を関西電力に販売する。
小売店などの店舗も導入に積極的だ。毛織物大手のニッケは8月末、運営する商業施設「ニッケパークタウン」(兵庫県加古川市)の屋上に20キロワットの太陽光パネルを設置した。売電は計画していないが、太陽光パネル設置の企画請負事業への参入に向けパネルの調達や設置ノウハウを蓄える。
京都銀行は15日、開業する長岡京駅前支店(京都府長岡京市)に太陽光発電システムを設置する。開業後は全166店のうち26店が太陽光発電を備える。今後は新設・改装する店舗には原則として10キロワット前後の太陽光発電システムを設置する計画だ。
後発薬大手の東和薬品が9日稼働させた岡山県内の物流センターは850キロワットの太陽光発電システムを設置。パナソニック製太陽電池を採用した。フル発電した場合、65%は余剰電力となり中国電力に売電する。関電の域外だが、こうした売電の積み重ねで中国電管内の需給に余裕ができれば、その分だけ緊急時の電力融通が容易になる。
出力1000キロワットを超えるメガソーラーには多額の初期投資が必要。1000キロワット未満だと投資額を抑制でき、比較的狭い土地も活用できる。出力を10キロワット以上、50キロワット未満にして1000平方メートル程度の遊休地を活用する「プチソーラー」も注目を集めている。
メガソーラーの「小口販売」を手掛ける会社も出てきた。「エクソル」ブランドの太陽光発電システムを販売するグリーンテック(京都市)は、中小企業などから出資を募り、メガソーラーを運営・建設する計画を持つ。収益は出資者に還元する考え。住宅や工場などの屋根を第三者の太陽光発電システムに貸し出す「屋根貸し」ビジネスも広がりをみせている。
(記事:日本経済新聞)