
ルーフリース発電盛況!? 太陽光パネル、九州は最適
ビルや民家の屋上を借りて太陽光発電パネルを設置し、電力会社に売電する「ルーフリース(屋根貸し)発電」が注目を集めている。全国平均よりも日照時間の長い九州は太陽光発電に最適とされるが、まとまった土地を確保するのは至難の業だ。設置場所を求める事業者と、賃料収入が得られる大家側の双方にメリットがあるだけに今後も拡大が見込まれる。
太陽光発電設備業「ロハスホールディングス」(東京)は11日、スペインのパネル製造大手「ヘリオスエナジーヨーロップ」と福岡市にルーフリース発電に取り組む合弁会社を11月末に設立すると発表した。ロハスHDの内田俊一郎最高経営責任者(CEO)は「ヘリオス社のパネルは高性能だ。合弁を弾みにグループ全体で総発電量100メガワットを目指す」とぶち上げた。
合弁会社は、発電効率が高いヘリオスのパネル用に屋上や屋根を貸してくれるビルや民家探しを進める方針だという。
◆問い合わせ続々
7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度では、太陽光発電による電力の買い取り価格は1キロワットあたり42円。これにより、太陽光発電事業への新規参入を目指す動きが加速した。
ところが、一定の日射量と広さを併せ持つ場所を探すのは難しい。しかもヘリオス社は大手とはいえ日本での知名度はまだまだ。従業員115人の中小企業であるロハスHDと手を組んだ理由はここにある。
ロハスHDは昨年4月、福岡県内を中心にいち早く屋根貸し発電事業に乗り出した。ビル・家屋の所有者にとっては屋根を貸すだけで賃料収入と遮熱効果を得られるとあってロハスHDには月50件ペースで問い合わせが寄せられているという。発電はまだ始めていないが、10メガワットを発電できるだけの屋根をすでに確保したという。
ロハスHDの担当者は「広大な空き地がない都市部でも太陽光発電事業を展開できるメリットがある。買い取り制度が始まって以降、注目度は高まっている」と手応えを隠さない。先月21日にはソフトバンクの孫正義社長も屋根貸し事業への参入を表明した。
◆自治体も名乗り
「屋上を貸したい」と手を挙げる自治体も出てきた。福岡県は先月、県有施設を有料で貸し出す事業を九州の自治体では初めて始めると発表。その第一弾として11~22日に久留米高等技術専門校(久留米市)など県立4校の校舎屋上の利用希望者を募った。応募者数は現時点で未公表だが、「それなりの複数の応募があり、好評だった」(県担当者)だという。
「土地貸し」に乗り出す自治体も出てきた。鹿児島県枕崎市は先月8日、今年度限りで廃止になる枕崎空港の跡地(11万平方メートル)を発電事業者に20年間貸し出す方針を発表した。
固定価格買い取り制度で42円の価格を保証されるのは来年3月末までに手続きを完了した発電事業者のみ。これが、太陽光発電事業への“駆け込み参入”を加速させている。
ただ、近隣にビルが建っているなど日照量を十分に確保できるビルや家屋はそれほど多くはない。ビルや家屋の売買や賃借などでルーフリース契約が障害となる可能性もある。
また、電力会社が割高で購入することは太陽光発電事業者にとっては大きなメリットとなるが、一般の電気利用者にメリットはない。むしろ電気料金に上乗せされることになるだけに太陽光発電の普及は手放しで喜べない側面もある。
(記事:産経ニュース)