
集合住宅にも太陽光発電 家主に提案・新築に採用
一戸建てが主流だった太陽光発電の集合住宅への導入が九州で相次いでいる。シノケングループや三好不動産(福岡市、三好修社長)は管理する賃貸住宅の家主に提案。西日本鉄道などは新築マンションに整備する。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の開始で売電価格が購入電力料金を上回るため、賃貸物件の収益向上や共益費などの低減を見込める。イメージアップによる入居率向上も狙う。
シノケンは年内に福岡や東京、仙台などで管理するアパート約1300棟のオーナーに、太陽光発電パネルを設置する提案を始める。工事会社2~3社と提携し、見積もりや工事、メンテナンスを委託する。2013年12月期に60~120棟の受注を狙う。
三好不動産も福岡で賃貸マンションの家主に提案を始めた。グループ企業のサンコーライフサポート(福岡市、橋本一郎社長)が施工とメンテを担う。既に10棟に設置済みで、13年9月期に累計40棟分の受注をめざす。
シノケン、三好不動産ともパネルの調達・設置費用は物件所有者が負担するが、売電収入で8~10年で回収できると試算。以降の売電収入が所有者の利益になると提案する考え。両社は工事代金や工事会社からの手数料を得られる。
一方、西鉄は太陽光発電付き賃貸マンションの第1弾を福岡市で14年2月に完工する予定。売電収入で廊下など共用部の電気料金を賄うことを検討中で、一般物件より共益費が安くなる見込み。
エストラストは太陽光発電付き分譲マンションを14年1月までに現在の12棟から21棟に増やす。本社を置く山口に加え、宮崎や熊本、佐賀、大分などで供給。売電収入を共用部のリフォームに使う積立金に回す。
再生エネルギーの固定価格買い取り制度は物件所有者と電力会社が来年3月までに契約を結ぶと、太陽光発電による電気を1キロワット時当たり42円で10~20年、売ることができ、購入電力料金との差益が発生する。九州電力が来春予定する値上げ後も差益は確保できるとみられる。
住宅の太陽光発電設備はこれまで一戸建てが主流。集合住宅への導入は投資回収の不確実性などから進んでこなかった。新制度を受け普及が本格化する形だが、設備の耐用年数などによっては投資回収計画が崩れるリスクもあり、パネルの調達や維持・管理で各社のノウハウなどが試される。
(記事:日本経済新聞)