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2012年11月21日
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ふるさとのエネルギー:弘前・スマートシティ構想

 青森県弘前市はIT(情報技術)を活用して街全体で効率的にエネルギーを使う「弘前型スマートシティ構想」を策定中で、現在民間4社と共同研究を進めている。燃料販売会社「設備技研オサナイ」はその中で唯一の市内の業者だ。最新のソーラー発電機と小型風力発電機を10月から市役所屋上に設置して発電量のデータを取り、雪国で利用可能かどうか、実験している。小山内高雄専務(51)は「雪深い弘前に適した発電システムを探りたい」と語る。【鈴木久美】

 −−5年ほど前から再生可能エネルギーに注目してきましたね。

 実家は代々続く米農家。会社では灯油販売を中心に農業にも取り組んできましたが、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)問題などで先行きが見えない。そんな中で再生可能エネルギーに将来性を感じ、全国を歩いて雪国でも利用可能な発電システムを探してきました。東日本大震災前には、ほとんど見向きもされませんでしたが、今ようやく知識が役立っています。

 −−市役所に設置した太陽追尾式のソーラー発電機の特徴は?

 雪国の弘前市では、太陽光発電の普及は進んでいませんでした。パネルに雪が積もって発電量が低下するためです。そこで、北海道の業者が開発した太陽の動きに合わせてパネルが動く「追尾式」を選びました。動かない固定型に比べて、発電時間が1・5〜2倍近くに延びます。パネルが常に太陽の方を向くので雪が溶けやすく、設置角度も雪が最も落ちやすいよう計算されています。強風にも耐えるよう設計され、屋上に設置可能なんです。

 −−小型風力発電機は、見た目も従来のものとは違いますね。

 一般の風力発電機の“心臓部”にあたるギア(歯車)がない「ギアレス構造」です。外周部にコイルを配置し、羽根の先端部分の磁石が回転することによって発電します。米国で開発されました。風速0・9メートルの微風でも発電でき、冷蔵庫並みの低騒音が特徴です。弘前市は内陸に位置し、市街地の風は比較的弱いため、この発電機を取り入れました。

 −−研究やデータをどう生かすのですか?

 追尾式ソーラー発電機は北海道ではすでに使われていますが、弘前市の雪質は北海道と違う。来年3月までに発電量を調べ、弘前市に向いた発電システムを探ります。データは離れた場所からもパソコンで確認できます。このシステムがうまく機能すれば、民間施設や公民館などに設置できると思います。将来的には、自分自身の農業の経験を生かして、再生可能エネルギーを利用した農業にも挑戦したいですね。

(記事:毎日新聞)

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